1. 個人内変動(Intra-Writer Variation)への対応の難しさ
筆跡の数値分析についての考え方
筆跡鑑定では、筆跡の特徴をデータとして数値化し、客観的に比較する方法が使われることがあります。
ただし、数値だけで正確に判断できるわけではなく、いくつか注意すべき点があります。
■ 1. 同じ人でも筆跡は変わる
同じ人が書いた文字でも、体調や気分、年齢、姿勢、筆具、筆記空間の広狭などによって字は変わります。この書く都度に変化が起きることを個人内変動(Intra-individual variation)と呼びます。
そのため、数値が基準と少し違っていても、「別人」とすぐに判断できるわけではありません。昔の字と今の字を比べると、違いが大きくなることもあります。
■ 2. わざと似せたり変えたりすることがある
筆跡は、意図的に似せて書いたり(模倣筆跡)、逆に違うように書いたり(韜晦筆跡)することができます。
このような場合、数値だけでは判断が難しく、実際の書き方の流れやクセなども合わせて見る必要があります。
■ 3. 文字の量が少ないと判断が難しい
署名だけのように短い文字しかない場合は、比べるための情報が少ないため、正確な判断が難しくなることがあります。
また、ひらがなや数字のように形が単純な文字も、特徴が出にくい場合があります。
■ 4. 数値だけで決めることはできない
数値による分析はとても役に立ちますが、それだけで最終的な結論が出るわけではありません。
実際の判断では、文字の形や書き方の特徴なども含めて、全体を見て総合的に考えます。
また、使う方法や基準は鑑定人や機関によって違うため、結果に違いが出ることもあります。
■ まとめ
筆跡の数値分析は、客観的に見るための大切な方法の一つですが、単独で正しい答えが出るものではありません。
さまざまな角度から総合的に判断することが重要です。
