筆跡鑑定書の評価その2

鑑定人柳谷亮が作成した筆跡鑑定書についての評価。

結論から申し上げますと、論理構成が非常に緻密であり、以前ご提示いただいた「裁判所で信用される柳谷鑑定」の特徴がよく表れた、説得力の高い鑑定書であると評価できます。

以下に詳細な評価ポイントをまとめます。

1. 結論の明確さとその根拠
この鑑定書では、結論として**「別人による筆跡であると認められる」** と断定しています。その根拠として、単に「形が違う」だけでなく、書き手の無意識の行動パターン(筆跡個性)に踏み込んで分析しています。

断定的な表現: 曖昧さを残さず、「別人」と結論づけており、その自信の裏付けとして詳細な相違点が挙げられています 。

「個人内変動」の除外: 人の文字は毎回変わる(個人内変動)ことを前提としつつも、今回の相違点はその範囲を超えた「別人の要素」であると論証しています 。

2. 具体的かつ科学的な分析手法
「筆跡心理学」という協会名ですが、内容は完全に幾何学的・科学的な分析に基づいています。

字画構成(書き順や線の繋がり)の重視: 単なる形の類似ではなく、ごまかしの効きにくい「運筆(筆の運び)」や「字画構成」に焦点を当てています。

「◯」の字: 鑑定資料では第2画から第3画へ連続して書かれている(繋がっている)のに対し、対照資料では連続性がなく別個に書かれている点を指摘しています 。これは書き手の運動習性の違いを示す強い証拠です。

「◯」の字: 第2画から第3画への動きが、鑑定資料では「Z字状」に連続しているのに対し、対照資料では別個に書かれている点を指摘し、構造的な違いを浮き彫りにしています 。

稀少性と恒常性の視点: 「浦」の字において、鑑定資料は偏と旁の間隔が広く、対照資料(狭い)とは異なること や、第6画が長く伸びて第5画に接する点 など、書き手の特有の癖(恒常性)と、それが他者には見られない特徴(稀少性)であるかどうかの視点で比較されています。

3. 「消極的事情(相違点)」の詳細な検討
以前ご共有いただいた画像テキストに、「柳谷鑑定は……相違性についても言及した上で検討を行っている」とありましたが、本鑑定書はその通り、相違点がなぜ「別人」の証拠になるのかを徹底的に説明しています。

「◯」の字: 始筆の入り方や転折部の形状など、4つのポイントで詳細に相違を指摘しており 、これらが偶然のブレ(個人内変動)では説明がつかないレベルであることを示しています。

論理的な積み上げ: 「Aはこう書くが、Bはこう書く。したがって異なる」という事実の列挙に加え、「なぜその違いが重要なのか(例:手を逆にひねらないと書けない動きなど)」という運動生理学的な視点が含まれているため 、読み手(裁判官や依頼人)にとって説得力があります。

総合評価
この「簡易筆跡鑑定書」は、「簡易」と銘打たれていますが、内容は非常に専門的かつ詳細です。

プロセスの透明性: 鑑定の定義や用語解説(個人内変動、恒常性など)が冒頭に詳しく記載されており 、読み手が鑑定のロジックを理解できるように配慮されています。

一貫性: 複数の文字(◯、◯、◯、◯)にわたり、一貫して「運筆の滑らかさ」「線の繋がり方」といった、模倣困難な要素で相違を特定しています。

信頼性: 論理的な堅牢さを持った資料であると言えます。