九州のある弁護士が、自身のウェブサイトにおいて「裁判所は筆跡鑑定の結果を信用するのか」という趣旨の記事を掲載し、その中で、福岡高等裁判所の判断に触れつつ、「裁判所は筆跡鑑定そのものや鑑定結果を重視していない」といった見解を示しています。
この見解は、実務経験に基づく一つの評価として理解できるものの、「鑑定結果を信用していない」とまで一般化するのは、やや正確性を欠く可能性があります。
実際には、当社の代表鑑定人柳谷亮が作成した筆跡鑑定書について、裁判所がその信用性を認め、証拠として採用できる旨を明確に判示した事案も複数存在します。
このことからも分かるように、裁判所が筆跡鑑定を一律に軽視しているわけではありません。
もっとも、従来より指摘されているとおり、裁判においては筆跡鑑定のみで結論が導かれることは稀であり、各種証拠や事実関係を総合的に評価した上で判断がなされます。筆跡鑑定は、その中の一つの専門的証拠として位置づけられるものであり、事案によっては重要な役割を果たすこともあります。
一方で、裁判官ごとに証拠評価の姿勢や重視点に差があることも否定できず、筆跡鑑定に対する評価が相対的に低いケースが存在するのも事実と考えられます。
したがって、筆跡鑑定の証拠価値については、「一律に信用されない」と捉えるのではなく、「個別事案および裁判体の判断に応じて評価が分かれる」と理解するのが、より実態に即した見方といえるでしょう。
