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筆跡鑑定人ブログ-26
- 筆跡鑑定人 根本 寛
- このコーナーに書くのは、事実に基づく、筆跡鑑定人の「独り言」のようなものです。お気軽にお付き合いいただければ幸いです。ただし、プライバシー保護のため固有名詞は原則的に仮名にし、内容によってはシチエーションも、特定できないよう最小限の調整をしている場合もあることをご了解ください。
どうして裁判結果は予測できないのか
友人のベテラン弁護士・原口絋一氏(新宿区)は、弁護士でありながら裁判によらない話し合い中心の紛争解決法を確立しようと長年構想を練っています。その名称は「円満紛争解決学」といいます。
つまり「そろそろ民主主義社会にふさわしい、国民の自主的な紛争解決のシステムが考えられてもいいのではないか」というのが彼の思想です。理想のある大変立派な考えですが、実際は「馴れ合い解決」に堕する恐れもあるので、どのようなシステムが望ましいのかと模索を続けていて、できるだけ多くの賛同者をあつめて一つの社会運動として発展させたいと願っています。
原口氏がこのような思想を持つに至ったのは、現在の裁判制度に多くの問題があるからですが、その一つとして「判決が予測できない」ことをあげています。今日のように、多くの判決が「非合理的で予測不能」なことは、民主主義や資本主義のあり方にそぐわないのではないかというのが彼の考え方です。そして、判決が予測できない理由として、つぎの11カ条を上げていますが、筆跡鑑定人の私も常々実感しているところです。
1. 自由心証主義 ・・・・・・・・・・・ 裁判官が自分だけの自由な心証で判決する。
2. 裁判官の独立 ・・・・・・・・・・・・ 具体的な事件について同僚の裁判官と議論することが全く無い(してはいけない)
3. 証拠主義 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 法廷に書面や証人として出されたものだけで判決する。
4. 当事者主義 ・・・・・・・・・・・・・・ 法廷に何を出すかは当事者の責任。裁判官は出されないものまで考えなくてよい。
5. 心証の秘密 ・・・・・・・・・・・・・・ 法廷に出されたものを裁判官がどう評価しているかは判決するまで口に出さない。
6. 迅速裁判 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 事件に直接関係ないような背景的事実については全く聞く耳を持たない。
7. 裁判官の転勤 ・・・・・・・・・・・・ 2、3年毎に転勤があり、その際個別事件の引継ぎは全くしない。
8. 法学部エリート主義 ・・・・・・・ 裁判官となるためには法律以外の教養はとくに求められない。
9. 無責任主義 ・・・・・・・・・・・・・・ 裁判官はシステム的に過失を訴えられることはない。
10. 直輸入の法律 ・・・・・・・・・・・・ 西欧から輸入して150年経ったけど一般社会にあまり浸透していない。
11. 三つの魂の放棄 ・・・・・・・・・・ 司法人の魂ともいえる「真実発見」「法的安定性」「具体的妥当性」を放棄している。
「三つの魂の放棄」というのはよく分からないので、私なりの解釈ですが、今までの司法人の理念といってよいもののようです。「真実発見」とは文字通り真実を明らかにしようとする熱意、「法的安定性」とは、過去の判例や考え方と矛盾せず社会的に混乱を引き起こさないこと、「具体的妥当性」というのは、社会風土や民衆の考え方になじむか、ということのようです。
原口氏は、今では「真実は神様しか分からない」「改革こそ善、旧態は全て悪だからぶち壊せ」「現実社会の具体的妥当性などはもはや古い、われわれが新しいやり方で民を導くのだ」というのが、若手裁判官の考え方だと批判しています。
原口法律事務所 03-3361-9633
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