筆跡鑑定人ブログ

筆跡鑑定人ブログ−38

筆跡鑑定人 根本 寛


 このコーナーに書くのは、事実に基づく、筆跡鑑定人の「独り言」 のようなものです。お気軽にお付き合いいただければ幸いです。
ただし、プライバシー保護のため必要と思われる固有名詞は仮名に し、内容によってはシチュエーションも、特定できないよう最小限の調整をしていることをご了解ください。


失敗しない鑑定依頼の方法     (09−12)


鑑定人選びについて

 筆跡鑑定を頼もうとしたときに、当然のことですが誰に頼むのかが最も肝心なことです。筆跡鑑定人といっても、その実力は非常に差があるからです。

 だからといって、私が鑑定人の一人として自分を推薦しても信用していただくには限界があるでしょう。このあたりを確かめるには、実際に経験した方に聞くのが一番です

 この点で、私は皆さんにお役に立てることがあります。それは私の依頼人で、日本の代表的な鑑定人5人の鑑定書をじっくりと見た経験者を紹介できるからです。鑑定人の実力や費用面など、私に聞きにくい方は私までご一報ください(090−8642−5979)その方をご紹介いたします。この方のことは、この鑑定人ブログの34話と37話にすこし書いてあります。

   
裁判所の指定する鑑定人について

 裁判で、原告・被告が同意して鑑定人を委嘱する場合があります。その場合、裁判長が、裁判所の鑑定人リストから鑑定人を推薦することがあります。

 これは正しい訴訟指揮ですが、この場合も必ずしも安心できません。何故なら、鑑定人の能力が低く鑑定を誤ることが少なくないからです。そうなってから、私に泣きつかれる方が結構いらっしゃいます。

 この場合、信頼できる鑑定人を知っているならば、その鑑定人を希望することを裁判長に申請することが可能です。そして係争相手が了解すれば、その鑑定人に依頼することができるからです。

   
鑑定に使う資料について

 つぎに、鑑定に使う資料です。鑑定すべき資料は、「遺言書」であろうと「契約書」であろうと、それしかないわけですから、当然、選択の余地はありません。

 肝心なのは対照する資料です。鑑定では、基本的に「同一文字」「同一書体」 で照合しますから、そういう文字ができるだけあった方がよいことになります。ただ、同一文字がない場合は「ウ冠」とか「木偏」、「しんにょう」など、「文字の部分」で照合することになります。

 その資料は、本人であることが明白なもの、できるだけ日付の入ったもの、できれば鑑定資料と性格の似たようなものが望ましいのです。そして、できるだけ2〜4枚の複数の資料が望ましいのです。

 鑑定では、1文字から筆跡個性を指摘するよりも、2〜3文字から指摘する方がはるかに信頼性が高いものになります。1文字では「たまたまそのような形になったのだろう」という疑念を払拭するのが難しいのですが、同じ特徴が2〜3文字に表れていれば疑問の余地はなくなります。

 また、高齢になり、例えば強く震えたりして、従前の筆跡とは大きく相違している場合があります。そのような場合も、資料をお送りいただいてご相談していただくのがよいのです。鑑定が可能かどうか、つまり同筆か異筆かの判断が可能かどうかをご返事することは無料ですから。

 
伏せるべき人名などの扱い

 最近は、誹謗中傷の文書の鑑定なども多いのですが、そのような場合、その誹謗中傷の文書の発信人と思われる人物の名前などの扱いは微妙です。依頼者としては、犯人と確定しているわけではありませんから、安易に名前を公開しては問題です。

 そこで、資料の一部を黒く塗りつぶして鑑定人に示される方がいますが、一般的には、そのあたりは鑑定人が責任を持って処理しますので、できるだけ全体を示していただいた方が良いのです。

 このようなことに限らず、疑問があれば遠慮なく鑑定人にお尋ねいただきたいと思います。鑑定人としては、その専門知識を動員して、依頼人の利益を確保したいと考えていますから。

 
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