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(隔月誌「Mi」06年8月号より)
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■第一に経営の価値観を整理する |
二回にわたって経営理念とビジョンの大切さを述べてきた。重要なポイントを二つほど書き落としたので補足させていただきたい。 一つは経営に対する考え方を整理するということである。つぎの二つの価値観の優先順位を明確にすることが大切である。 @ キャピタリズム経営‥‥‥キャピタリズム、つまり資本主義経営である。この立場に立てば、何よりも「資本の増加」(儲け)を重視する。 A ミッション経営‥‥‥使命感経営。この立場に立てば自社の仕事に使命感を持ち、自社にしかできない特異貢献をしようとすることである。 この二つの価値観のどれかに絞れというのではない。どちらを優先するのかということである。資本主義の世界に生きているのであるから、利益を無視して使命感だけで生存することはできない。ただし、使命感経営を優先するとした場合は、たとえば、顧客には分からないから、品質を落として利益を増大しようなどという行動は許されない。 このようなことを経営理念や経営方針につぎのようにきっちりと明記することが大切である。「わが社の第一義は顧客貢献であり、利益はそのつぎである」 そして、明記した以上は、どんなに苦しくとも誘惑に負けてはならない。歯を食いしばってもこのような約束を守ることが「会社の品格」を高め、長い目で見て繁栄が約束されるのである。 |
■ビジョンの定義を明確にする |
第二には、ビジョンの定義を明確にするということである。ビジョンには「究極のあるべき姿」という意味と、「五〜十年先の実現可能な目標像」という二つのとらえ方がある。 今までの日本では、前者のような理解の仕方が多かった。しかし、世界的には後者のとらえ方が多い。 私は社内の思想を統一する意味では、後者の方が適切ではないかと思っている。つまり後者は「いつまでにどうする」と明確に述べられるので、ビジョンがより現実的にものになり、社員の理解や共感が得られ、意欲が鼓舞されるのである。 いままでに発表された最も優れたビジョンの一つは、故・ケネディ大統領が述べた「一九六〇年末までに、人類を月面に立たせる」というものだといわれている。 |
■能力にかかわる二つの要点 |
さて、ここから前回説明した戦略を構成する三要素のうちの「能力」と「マーケティング」に話を進めたい。まず能力である。 ここで能力というのは、「独自の技術」であったり「新しいサービスを生み出す力」、「アイディアを素早く商品に仕立て上げる能力」であったりと、業態により多種多様であるが、この能力こそが企業における利益の源泉といえる。 能力に関しては二つの重要なポイントがある。 一つは、「真の利益は単純な競争力などではなく、顧客の強く求めるなにごとかにおいての指導的地位から生まれる」ということである。 二つ目は、どのような指導的地位といえども、一時的で短命なものだということである。 指導的地位とは、さきの様々な能力の世界で「リーダー的な立場」、「一流」であるということである。それも「顧客が強く求めている」ことでないと意味がない。そして、リーダーであるか、三流であるかは、顧客が決めることなのである。 |
■どのような指導的地位も短命である |
つぎに、どのような指導的立場といえども、一時的で短命なものだというセオリーである。 どれほど魅力的な商品を開発し成功したとしても、その栄光は一時的なものであり、油断をすればすぐに次に取って変わられてしまう。このことは、どの産業においても枚挙にいとまがない。 このことから、私は「企業活動はノースストップモーション」でなくてはならないといい続けている。ノーストップモーションとは文字通り止まることはないと言うことである。企業も人も常に変化進展し続けなくてはならない。一箇所に止まることはゆっくりだが確実にやってくる死を待っている姿にほかならない。 |
■あるランドセルメーカーの能力 |
私が過去に関与したあるランドセルメーカーがある。いうまでもなく、ランドセルは小学校に入学した児童が必要とする。 ベビーブームの30年前ごろには毎年200万人も生まれた小学一年生は、現在は120万人程度と激減している。当然、一年に売れるランドセルは100万個以下である。 それだけに厳しいサバイバル競争が繰り広げられているが、このメーカーは、シェア10%程度で業界五位のあたりを確保している。 このメーカーの強みは何かというと、実は「おまけ作戦」である。ミニチュアサイズの「赤ちゃんリュック」とか「ミニランドセル」など、子供が飛びつきたくなるような魅力的な小物のおまけが付いている。 おまけ作戦などというと、「そんなムダなもので釣るなんて」と 顔をしかめる向きをいるかも知れないが、本来の商品のランドセルの内容も決して他のメーカーに負けてはいない。 ランドセルは、超成熟商品で、本質的な改良の余地はほとんどない。軽量化を図ったり、カラー化を図ったりしているが、本質的な違いはほとんどないと言ってよい商品である。今は、ブランド力や良い売り場を押さえていることなどの争いになっている。 このメーカーは、魅力的で価値観のあるおまけを企画し安く作ることにかけては抜群の能力を持っている。入学前の児童の手を引いて、親やおばあちゃんなどが売り場にやってくる。大人は、名の通った品を選ぼうとするが、子供は目ざとく魅力的なおまけを見つけて「こっちがいい!!」と主張するというわけだ。もともと、品質差などないようなものだから、子供の主張が通ってしまう。 指導的地位とは、顧客が強く求めている分野でリーダーの立場をキープし、リーダーであるか三流であるかは顧客が決めるといった。ランドセルの場合は、「おまけ」は顧客の強い欲求の一つであり、そして、その顧客とは入学前の児童なのである。このランドセルメーカーの能力は効果的に発揮されているといえる。 |
■マーケティングとは売れる仕組みづくり |
マーケティングという概念はなかなか難しく、的確に表す日本語はない。販売そのものではなく、「売れる仕組みづくり」ということである。 |
図表1 理念なき迷惑企業の滅亡サイクル |
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