| (隔月誌「Mi」06年4月号より) |
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成金経営からの脱皮を |
私の30代はベンチャー企業を設立し約10年間社長を務めた。40歳から経営は弟に譲り、経営コンサルタントに転進し述べ300社に関与してきた。この経験から痛感することは、私が知る限り、日本の経営者は真面目な努力家が多いが、ビジョンと戦略の確立の面がはなはだ弱いということである。 ビジョンとは、「わが社は将来どのような企業になりたいのか」ということである。あるいは、5〜10年後になりうる具体的な企業像である。 ビジョンの前に「経営理念」がある。経営理念とは「どのような経営がしたいのか」、あるいは「どのような価値を重視して経営していきたいのか」ということである。 私が表題でビジョンといっているのは、この理念を含んでいる。 |
■企業の本質は「社会価値の創出」 |
ここしばらく、ライブドア・堀江貴文前社長の行動がマスコミを賑わしている。評価は「理念なきマネーゲームの帝王」というところに落ち着いたようだ。また、ライブドアという会社のついては、「本当の社会価値は生み出していない。会社の吸収合併で金を集めたにすぎない」ともいわれている。 近年IT関連で急成長する企業が少なくないが、急成長するには、たとえばマイクロソフトや近年のグーグルのような、今までにない強烈な「社会価値」を生み出していることが必須条件である。 それが、事業というものの本質である。つまり、事業の真髄は「社会価値の創出」にあるのであって、利益や顧客満足あるいは従業員満足などは、事業の本質の一部といえる。キャピタリズム経営(資本主義経営)だからマネーゲームも時に必要かも知れないが、企業の本質などではありえないのである。 つまり、経営理念は、人により個性的であってかまわないが、少なくとも、「社会価値を創出する」という強い信念はぜひとも確立していただきたいのである。 経営に関わる人々は、まず、何よりもこのような「使命感」の血肉化が求められる。私にいわせれば、このような理念は、企業経営に参加するための入場券のようなもので、これなくして、経営者などとの顔はしていただきたくない。 このような、理念のない経営を私は「成金経営」といっている。その反対が「使命感経営」である。一部の若者が、ライブドアの堀江貴文前社長を「革新者」として評価していると聞くが、彼は「成金経営者」そのものというべきであろう。 |
■「不易流行」の意味するもの |
「不易流行」という言葉がある。松尾芭蕉が奥の細道を行脚して会得した考え方だと言われている。「不易」とはいつの世にも変わらない真理。「流行」とは時の流れの中でどんどん変わっていくもの、いや変わるべきものとの意味である。 不易すなわち「不変の真理」は大事であるが、しかし一方、世の中は「万物は流転する」(ヘラクレイトス)のように、変化することもまた大事な世の中の真実である。そして、その「流行」から新しい「不易」が生まれる。つまり、世の中は「不易→流行→不易」のサイクルによってスパイラル状に発展していく。しかしこのサイクルが成立するためには、「不易」の智恵を理解していることが必要なのである。 このように考えると、堀江氏は「経営の真髄は社会価値の創出」という不易を理解していなかったが故に、局部的な突風は起こしたかも知れないが、「革新」をして新しい不易を生むという機会を失ってしまったようである。 |
■迷惑体質企業になっていないか |
堀江氏に限らず、マンション偽装問題など、理念の欠如した企業が多い。そして、それらの企業が一時のアダ花で終わってしまうことは、ヒューザーや一昔前の雪印食品など枚挙にいとまがない。自業自得とはいえあっけないものである。 図表1を見ていただきたい。理念がなく、「何が何でも儲けたい」と考えれば、その企業の行動は傍迷惑にならざるを得ない。つまり、その企業の体質は「迷惑体質企業」だ。その結果、顧客や社会の支持は失われ、業績悪化となり、それを取り戻そうとさらにエゴ行動が加速する。そして、ついには少々の危ない橋でも渡れということになり、信用の基本である商品を偽装するという、絶対にやってはいけないところに足を踏み入れてしまった。 「使命感」のないところに、長期の繁栄はありえないのである。 |
| 図表1 理念なき迷惑企業の滅亡サイクル |
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■理念と戦略は飛行機の両翼 |
わが国は、高度成長期には理念など考えなくとも成長することができたためか経営理念の明確でない企業が多い。しかし、それ以上に「戦略」を持たない企業が多い。 元来、農耕民族で「隣百姓」の言葉のとおり、隣のやることをマネしていれば大過なく生きてこられた。そのDNAが身についているからだろうか。 真面目な経営者の中には、「倫理経営」を標榜し、倫理的・人格的に向上していきさえすれば企業経営は間違いないと考えている人もいる。 しかし、経営とはそんなに簡単なものではない。前にも述べたように、倫理的にしっかりしていることは経営に参加する入場券を持っていることにすぎない。 倫理とは人の道、人の世の基本的なルールである。ルールであるからどうしても行動に制約を受ける。そこで、堀江氏のようにそんなルールを無視してしまえという人間も現れる。しかし、倫理無視の経営が長く続くことはない。 そこから先、倫理を持ちながら、いかにしたら勝ち抜いていけるかの戦略づくりが経営者の第一の仕事である。 戦略とは「勝つための、他社にはマネのできない強み作り」である。決して難しいことではない。責任ある立場の人間が、ぜひともものにしようという意欲を持っていれば必ず発見できるものだと思っている。次回はそのあたりを中心に述べていきたい。 |